東京高等裁判所 昭和45年(ネ)3318号 判決 1974年4月30日
控訴人・附帯被控訴人 富士建設株式会社
右代表者代表取締役 武蔵正道
右訴訟代理人弁護士 平本祐二
同 高城俊郎
同 小川修
右訴訟復代理人弁護士 栃木義広
被控訴人・附帯控訴人 親和交通株式会社
右代表者代表取締役 石丸藤吉
右訴訟代理人弁護士 川辺直泰
主文
一 原判決を左のとおり変更する。
1 控訴人は被控訴人に対し金四、二一九、五八三円及びこれに対する昭和四五年二月二二日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。
2 被控訴人のその余の請求を棄却する。
3 右1項につき仮に執行することができる。
二 被控訴人の本件附帯控訴を棄却する。
三 訴訟費用は第一、二審を通じて十分しその七を控訴人の負担とし、その余を被控訴人の負担とする。
事実
控訴代理人は、控訴の趣旨として「原判決中控訴人敗訴部分を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」旨の判決を求め、附帯控訴につき、附帯控訴棄却の判決を求めた。
被控訴代理人は、控訴棄却の判決を求め、附帯控訴の趣旨として「原判決を次のとおり変更する。控訴人は被控訴人に対し金六、九三四、五〇〇円及びこれに対する昭和四五年二月二二日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は第一、二審とも控訴人の負担とする。」旨の判決並びに仮執行の宣言を求めた。
当事者双方の主張並びに証拠の関係は左のとおり訂正、付加、削除するほか原判決事実摘示のとおりであるからそれをここに引用する。
1 被控訴人の請求の趣旨を左のとおり訂正する。
(なお、この訂正について控訴人は同意した。)
「控訴人は被控訴人に対し金六、九三四、五〇〇円及びこれに対する昭和四五年二月二二日から完済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。訴訟費用は控訴人の負担とする。」
2 原判決九枚目表六行目「ところ、昭和四四年六月四日」以下同裏七行目「残金の支払を求める。」まで全部を次のとおり訂正する。
「ところ、昭和四四年六月四日被控訴人と訴外会社(原審相被告)との間で訴訟上の和解が成立し、訴外会社は被控訴人に対し物的損害金六、九三四、五〇〇円、営業利益喪失等による損害金二、八八一、七八七円合計金九、八一六、二八七円並びにこれに対する昭和四一年三月三一日から完済に至るまで年五分の割合による遅延損害金の支払義務あることを認め、同日金四〇〇万円を支払った。
(2) 訴外会社の支払った右金四〇〇万円の内わけは、営業利益喪失等による損害金として金二、八八一、七八七円及びその余の損害賠償として金一、一一八円、二一三円合計金四〇〇万円となる。右金一、一一八、二一三円は民法四九一条一項により、金九、八一六、二八七円に対する昭和四一年三月三一日から同四三年七月一〇日迄に発生した遅延損害金一、一一八、七一六円に充当された。
(3) そこで、被控訴人は控訴人に対し右金六、九三四、五〇〇円及びこれに対する昭和四五年二月二二日から完済に至るまで年五分の割合による遅延損害金を請求する。」
3 原判決一五枚目裏九行目「検証の結果」の次に「(証拠保全手続によるもの)」を加える。
4 原判決四二枚目表八行目「九二」「枚」「八五〇」とあるを削除する。
(当審におけるあらたな証拠)≪省略≫
理由
一 当裁判所も、当審におけるあらたな主張、立証を加えて本件全資料を検討した結果、被控訴人の本件請求は主文第一項1の限度で理由があり、その余は理由がないと認定判断するものであって、その理由の詳細は左のとおり訂正、付加、削除するほか原判決理由と同一であるからそれをここに引用する。
1 ≪証拠訂正省略≫
2 ≪証拠訂正省略≫
3 原判決二三枚目裏三行目「原告会社」以下同五行目「証拠はない。」まで全部を次のとおり訂正する。
「≪証拠判断省略≫ また控訴人は地盤沈下は本件工事期間中被控訴人会社従業員が控訴人の懇請を無視して工事現場の掘さく部分に排水が流れ込むような方法で洗車を継続したことに起因している旨主張するが、右主張にそう≪証拠省略≫は、≪証拠省略≫に照らして俄に信用することができず、他に右主張を認めるに足りる証拠はない。」
4 ≪証拠訂正省略≫
5 ≪証拠訂正省略≫
6 原判決三一枚目表四行目、五行目「証人山下賢造の」以下同裏二行目「であると考えられる。」まで全部を次のとおり訂正する。
「≪証拠判断省略≫ かえって、≪証拠省略≫によれば、訴外株式会社磯建設の手により被控訴人建物はその損害部分がある程度補修されて復旧し、A通り鉄骨基礎及び梁も損傷を受けたなりに安定した現況となっていることが認められる。以上の次第で、被控訴人のこの点についての被害額(補修工事費用)は、右認定にかかる補修工事費用を以て相当というべきである。他に、右認定を覆し、被控訴人主張の補修工事の必要と右認定額を越える補修工事費用を認めるに足る証拠がない。」
7 ≪証拠訂正省略≫
8 ≪証拠訂正省略≫
9 原判決三六枚目裏三行目「支払をしたものであるから、」とあるを「支払をしたものであり、その余の損害賠償債務の一部に充当すべきものとして支払われた金一、一一八、二一三円は、民法四九一条一項により、損害賠償債務金九、八一六、二八七円に対する昭和四一年三月三一日から同四三年七月一〇日迄の間の年五分の割合による遅延損害金(一、一一八、七一六円)に充当されたものと認められるから、」と訂正し、同四行目「訴外会社の債務承認」以外同六行目、七行目「当事者の合意に反し」まで全部を削除する。
10 ≪証拠訂正省略≫
11 原判決三七枚目裏二行目、三行目「この共同不法行為による」以下同三八枚目表三行目、四行目「生じないというべきである。」まで全部を左のとおり訂正する。
「この共同不法行為による右両名の損害賠償債務はその実質において不真正連帯債務であると解するのが相当である。けだし、わが民法の連帯債務は連帯債務者の一人について生じた事由が他の者についても絶対的効力を生ずる場合(債務消滅に関する場合が多い。)を多く定めている(民法四三四条ないし四三九条参照。)が、これは連帯債務者相互間に緊密な人間関係があることを前提とし、求償関係の煩雑を回避せんとすることを主たる目的とするものであるところ、共同不法行為者間にはかかる緊密な人的関係(主観的共同関係、)が存するとは一般的に云いえないばかりでなく、民法七一四条、七一五条及び七一八条による各不法行為責任がいずれも不真正連帯債務と解すべきものであるのに、より強く被害者を保護すべき同法七一九条の共同不法行為の場合にかぎって、これを別異に解し、連帯債務の特色である債務消滅に関する絶対的効力の諸規定(例えば同法四三七条)の適用により、かえって共同不法行為者の責任を軽減して被害者の保護・救済を弱める結果の生ずることを是認すべき実質的、合理的根拠・法意は全くこれを見出すことができないからであり、同法七一九条の場合もその実質は不真正連帯債務であり、少なくとも同法四三七条の免除の絶対的効力の規定はその適用がないと解するのが、被害者の保護・救済を厚くすることを目的とする同法七一九条の法意にもかなうものというべきである。したがって、連帯債務の免除に関する同法四三七条の規定は本件に適用はなく、右法条の適用を前提とする控訴人の主張は採用することができない。」
12 原判決三八枚目表七行目「前記和解においては、」の次に「右和解の趣旨、内容、弁論の全趣旨に徴し、」を加える。
13 ≪証拠訂正省略≫
14 原判決三九枚目表一一行目「六、以上の次第で」以下同裏五行目「支払う義務があるというべきである。」まで全部を次のとおり訂正する。
「以上の次第で控訴人は、被控訴人に対し金四、二一九、五八三円及びこれに対する昭和四五年二月二二日から完済に至るまで民法所定年五分の割合による遅延損害金を支払う義務があるというべきである。」
二 以上の次第で、被控訴人の本訴請求は金四、二一九、五八三円及びこれに対する昭和四五年二月二二日から完済に至るまで年五分の割合による金員請求部分の限度で理由があり、その余は理由がないから棄却すべきところ、原判決主文第一項中「金四、二一九、五八三円に対する昭和四一年一二月一日から完済に至るまで年五分の割合による金員より金一、一一八、二一三円を控除した金員の支払を命ずる」旨の部分は、認容する遅延損害金債権の内容が不定で、ひいて主文不明確の違法があるところ、この点に関し被控訴人は当審において請求の趣旨、原因を適法に訂正したから、原判決を主文第一項のとおり変更することとし、被控訴人の附帯控訴は理由がないから棄却することとし、訴訟費用の負担、仮執行の宣言につき民事訴訟法九二条、九六条、一九六条を適用して(なお、原判決主文中の仮執行宣言は、右変更の限度において失効し、その余は有効に存続している。)主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 上野宏 裁判官 後藤静思 日野原昌)